甘酒 のイメージは?
甘酒 といえば 冬のイメージが強いですが、
7月の 認知機能障害予防の食生活のすすめ は ■ 熱中症予防に飲む点滴「甘酒」です。
なんと! 江戸時代の夏バテ対策として
甘酒は 多くの人々が好んで飲む 夏の飲み物 でした。
もともと祭のときなどに作られ、 神前に供えたのち参拝者にふるまわれていました。
甘酒 の起源は 古墳時代に遡ります。
『日本書紀』には 木花咲耶姫(このはなさくやひめ)という 酒造りの神が 天甜酒 (あまのたむざけ) を造ったという話がのっています。
これが甘酒の起源と考えられています。
平安時代には、貴族が冷やした甘酒を好んで夏に飲んでいました。
平安時代(930年代)に作られた辞書、和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)には、
醴酒は音では「れい」、和名は「こさけ」、「一日一宿酒なり」とあるように1日だけ発酵させたアルコール度の低い酒でした。
その後一般にも売られるようになり、
江戸時代には甘酒売りが登場し、庶民にも親しまれるようになりました。
甘酒の歴史
先に記述の 奈良時代の『日本書記』に続き
927年の「延喜式」に「よねのもやし」が紹介されています。
「よねのもやし」・・・ これは米芽のことです。
古墳時代、朝鮮半島から渡ってきた渡来人の酒造りが
米芽を糖化剤として 蒸し米を糖化して作った「一夜 ( ひとよ ) 酒」
※ 米麹を混ぜて 60℃ぐらいの温度で保温し、一晩程度おくだけで出来るため、 古くは 一夜 ( ひとよ ) 酒 とも呼ばれていました。
その後米芽造りの過程の中で 麹菌が入り込み 蒸し米についた麹菌で 米バラ麴ができ、
4世紀から10世紀に至る間に バラ麴から蒸し米を糖化して造る醴(甘酒)から
今日のような 清酒というようなお酒に変遷してきたといわれています。
奈良時代末期の万葉集には山上憶良の「貧窮問答歌」に「糟湯酒」として米粕甘酒が登場します。
ここでは 酒粕甘酒が冬の季語に使われています。
『風雑(まじ)り 雨降る夜(よ)の 雨雑(まじ)り 雪降る夜(よ)は 術(すべ)になく 寒くしあれば 堅塩(かたしほ)を 取(と)りつづしろひ 糟湯酒(かすゆざけ) うち啜(すす)ろひて 咳(しはぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらぬ 髯(ひげ)かき撫でて 我(あれ)を措(お)きて 人は在らじと 誇ろへど 寒くしあれば 麻衾(あさぶすま) 引き被(かがふ)り 布肩衣(ぬのかたぎぬ) 有りのことごと 服襲(きそ)へども 寒き夜すらを 我(われ)よりも 貧しき人の 父母は 飢(う)ゑ寒からむ 妻子(めこ)どもは 乞ふ乞ふ泣くらむ この時は 何(いか)にしつつか 汝(な)が世は渡る』
意訳 : 風が強く吹く雨降る夜、雨のまじる湿った雪降る夜は、どうしようもなく寒くて堪らない。堅塩を取りつまみ糟酒をすする。咳がコンコンと出て、鼻がびしびしと鳴る。さもしい髯をかき撫でて、それでも「私以上の男などそうは居まいと」威張ってはみても、やはり寒くて堪らない。麻の夜具を被って布肩衣を何枚も重ねてはみるが、それでも寒い夜である。こんな私よりも、さらに貧しい人の父母は、(寒さに加え)飢えも加わり、さも寒いだろう。妻子はお腹が減ったと泣くだろう。そんなとき、一体どうやって君は世を渡っているのだろうか。
※ 山上憶良は、当時の貧しい人々の暮らしを赤裸々に歌に残したことで後世に名を残しました。甘酒を主題にしたものではありませんが、貧しい生活の中でも、甘酒(米麹ではく、酒粕で作ったものですが)が、体をあたためる存在であったことがわかります。
醴斎(れいし)と呼ばれる酒は、
大学寮で孔子を祭る際に 供えられる濾過した酒でした。
※ 斎とは : 中国 周の時代には、お酒を表わす漢字として、「斉(セイ)」という神を祭るための酒と、人が飲用するための「酒(シュ)」の2種類ありました。
閑話休題
神に献上する 醴斎(れいし) と、中国『三国志』に、みつけたら、皇帝や将軍に献上するという 霊芝(れいし)。
不思議な縁(えにし)を感じます。
甘酒売り
室町時代になると、甘味料の少ない時代の大衆飲料として 甘酒売り(にない売り)が登場しました。
甘酒は、醴(こさけ)と呼ばれ、「醴酒」として6月から7月まで売られていたという記述があります。
江戸時代に入ると 本格的な甘酒売りの商売が生まれました。
江戸時代になって甘酒を通年販売する店が現われ、
「あまーい、あまーい」と呼び売りする商売も誕生。
京都や大阪では夏の夜だけ売り歩いたそうです。
人間が生活し活動する上に必要なブドウ糖が豊富な上、
多くのビタミン群とミネラル、必須アミノ酸など多くの成分が入っているため
エネルギーの補給や免疫力の向上、
腸内の改善など効果を発揮してくれることで
庶民は夏の暑さを乗り切ったのです。
そうして、栄養豊富で、体力回復に効果のある 夏の飲み物 として庶民の間に普及しました。
暑い夏には体力も消耗し、暑さで病気になる人も多く、
特に 夏に死亡率が高かったことから
健康保持、栄養補給飲料として幕府も甘酒を奨励し、
価格も 4文を超えないようにお触れまで出していました。
江戸後期、甘酒が盛んだったころの時価は 米換算で 1文 10円。
労働換算では 50円といいます。
当時は米が税金と考えられていたので、実際市場で出回る実勢では 1文 50円。
もっとも、庶民生活を守るために米価を抑えていたという背景もあり
反対に幕府の収入が厳しく武士が困窮していた原因でもありました。
甘酒 4 文は、現代の価格で およそ 200円となります。
甘酒 という名称は
慶長年間 (1596-1614年) の書物に初めて登場しており、
1840年の「守貞謾稿」(もりさだまんこう)には、
真夏の栄養強壮剤として 庶民に親しまれていたとあります。
武家の文献にも「悪酔い防止に甘酒を飲め」という奨励文献もあります。
ちなみに俳諧が盛んだった江戸期で 「甘酒」の季語は夏 であることを記しておきます。
この甘酒は酒粕甘酒ではなく、米麹甘酒だと考えられています。
江戸時代、徳川幕府は人々の往来や資材の運搬交流を促すために
街道の整備を行いましたが、
旅といえば歩くことでしかできないように
体力を使う旅人や荷役使役者のために道中には
甘酒をふるまう茶屋が設けられていました。
特に東海道箱根地域は 山で厳しい道中なので、
甘酒を売る箱根の「甘酒茶屋」は有名です。
文政年間(1818-1829年)には 箱根地区には 9箇所の「甘酒茶屋」が設けられており、
その他坂の上や山道を登りきったところには「甘酒茶屋」があったといいます。
甘酒 は 日本人が生んだ最良の健康剤
江戸時代まで 国民の健康飲料として育まれてきた甘酒ですが、明治に入り大きな時代の壁に直面します。
それは戦後も続く欧米の飲食の極端な推奨策と、
明治政府が作った酒税法にあります。
明治32年(1899年)自家醸造が前面禁止になり、庶民がお酒を作れなくなりました。
それまで各家で造っていた どぶろく も禁止です。
作ったら罰せられます。
許可を得た蔵元だけが酒を造り、その税収で国政をまかなうというものでした。
1899年の国の税収の36%を酒税でまかない、1902年には国税収入の42%を占めていました。
ちなみに、酒類の許認可と品質・販売を管理している官庁は現在も国税庁です。
発酵の知恵
古代から人々の育んだ発酵の知恵のひとつは、
米麹から作られたアルコールの利用と そこに含まれる栄養成分にあります。
江戸の時代まで、人々は自分の健康に関して知識が豊富ではありませんでした。
当然、栄養補給とか健康補助食という考えはありません。
平均寿命の短かった昔は、健康でいることは自分の命を守ることでした。
今、病気にならないための未病対策、病気になって命を脅かすことのないように、
日々の健康を維持するために甘酒をお勧めするのも、
そのひとつの対策だと私たちは考えています。
甘酒で酔ったりしないの?
米と米麹(こうじ)で作る甘酒にアルコール分は含まれません。
甘味は米のデンプンがブドウ糖になったもの。
それを「酒」と呼ぶのは、日本酒と原料が同じだからとも
造り酒屋が副業で作っていたからともいわれます。
江戸時代、幕府が甘酒の価格制限をしていたこともあり、
売値が高騰して貧しい人々が買えなくなることがないよう 配慮していたのでしょう。
甘酒は天然ビタミンとアミノ酸を豊富に含み、 総合栄養ドリンクと呼びたいほどのすぐれものです。
暑い夏の間は熱中症対策にうってつけだったわけで、 幕府も粋な計らいをしてくれたものです。
江戸時代を伝える文化 俳諧に見る 甘酒
当時の三大俳諧師 松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶も甘酒(一夜酒)の句を作っています。
〈松尾芭蕉〉
〇 寒菊や 醴(あまざけ)造る 窓の前(さき)
甘酒を造る家の前に寒菊の花が咲いている。
一日のうちのいつかはわかりませんが、この家が民家であれば一家団欒の暖かさが伝わります。
また甘酒売りを生業としている零細行商などであれば生活のにおいが立ち込めてきますね。
〈与謝蕪村〉
〇 御仏に昼供へけり ひと夜酒
供え物はふつう朝のうちにするものです。
暑い昼に甘酒を飲もうとして、仏さまにもおすそ分け。
ほほえましい夏のひとときが目に浮かびます。
〈小林一茶〉
〇 一夜酒 隣の子迄来たりけり
甘酒を飲ませようと 外で遊んでいる我が子を呼んだところ、一緒に遊んでいた近所の子たちも甘酒を飲みにきました。
子どもたちが甘酒を飲み干して、 また元気よく飛び出していく姿が目に浮かびます。
認知機能障害予防の食生活のすすめ
■ 甘酒
熱中症は、体温を保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や、
血液の流れが滞るなどして体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発症する障害の総称です。
体内で水分を保持する働きのあるアルビミンが不足してしまい、
水を飲んでも保持できなくなるため熱中症を引き起こしてしまいます。
そのため、水分や塩分を適度に摂ることが大切なのです。
甘酒は、近年のキャッチコピー「飲む点滴」「飲む美容液」とも呼ばれるくらい、
栄養価が高く、水分・塩分・糖分をバランスよく摂取することができます。
加えてアミノ酸の効果を高める ビタミンB1・B2・B6といった成分も一緒に摂取できるので、
熱中症対策や夏バテ予防への高い効果が期待できます。
アルコールも砂糖も入っていないので、
小さなお子様から高齢者の方まで誰でも飲めるので、
『天然のスポーツドリンク』ともいえます。
(市販のスポーツ飲料のほとんどが、砂糖またはアスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料と大量の添加物でできています。熱中症予防で飲むには、体に優しい飲料とは言い難いですね。)
■ 甘酒はいつ飲めばいい?
甘酒を飲むベストなタイミングは朝一番に冷やし(常温)で飲むことです。
朝にしっかりと栄養を摂っておくことで、1日を元気に過ごすことができます。
また食欲がわかないときにも、せめて甘酒だけでも飲んでおくといいでしょう。
そのまま飲んでももちろんOKですが、バナナやキウイフルーツといったカリウムを多く含む食材と加えることで、より効果が高まります。
■ 熱中症予防に最適なナトリウム量の甘酒
厚生労働省によると、熱中症を予防するには100mlあたり40~80mgのナトリウムが含まれる飲み物が適しているとのこと。
甘酒のナトリウム量は、100mlあたりおよそ60mg。
水分と塩分がバランスよく配合されている甘酒は熱中症予防に適した飲み物といえるでしょう。
■ 米麹の甘酒を選びましょう!
市販でも種類の増えた甘酒ですが、「飲む点滴」と呼ばれるのは米麹の甘酒。
蒸したお米に麹菌をつけて米麹にし、酵素の発酵作用を利用して作る甘酒です。
砂糖を加えず、お米が持つデンプンの優しい甘みだけが残るので、飲みやすくカロリーも控えめ。
美容・健康効果が期待できるのはこちらの甘酒です。
■ その他の甘酒の種類
・ 酒粕の甘酒
日本酒の搾りかすである「酒粕」をお湯で溶き、砂糖を加えて作る甘酒です。
アルコールと砂糖が含まれているので、アルコールが苦手な方やダイエット目的の方には不向きかもしれません。
・ 紅麹甘酒
血行改善、血圧調整、コレステロール、血糖を下げる効能があり、「漢方薬」ともいわれる紅麹を使用した甘酒です。
色味もほんのりピンクがかって見た目も美しいことから人気の甘酒です。
・ 玄米甘酒
米麹甘酒は普通の白米と麹で作られているものですが、玄米甘酒はその名の通り玄米と麹のみで作られています。
味には独特のクセがありますが、玄米には白米よりも食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富に含まれているので、より健康効果が高いといえそうです。
・ 古代米甘酒
古代米とは、稲の原種の特徴を受け継いでいる米のことです。黒米、赤米、緑米などがあります。
古代米甘酒は甘さが控えめで、玄米よりも多い栄養素が含まれていることから、より一層の健康効果が得られるとして人気です。
■ 夏の栄養ドリンク 米麹の甘酒の効能
・ 麹菌は善玉菌のえさになってくれるので、免疫活動を活性化させて免疫力を高める効果もあります。
・ 腸内の悪玉菌を減少させ、善玉菌を増やして腸内環境を整える働きがあり、便秘予防や解消に一役買ってくれます
・ 米のでんぷん、たんぱく質が発酵の過程で分解されることで、様々な成分が生成されます。もちろん、天然の成分ですから、天然の栄養をたっぷりとれるということです。
・ 米麹の甘酒に含まれる含硫アミノ酸は、活性酵素を除去する力があり、くすみ、しわ、しみ、光老化の改善に効き目があります。
・ 塩分、水分、糖分を補給できます。
・ 食物繊維やオリゴ糖がバランスよく含まれており、ビタミンB群も豊富に含まれている甘酒は、血行と代謝を促進させる効果も。
・ 血行が良くなると体内の老廃物も排出しやすくなり、麹菌に含まれるビオチンは肌荒れ、肌のくすみなどにも効果抜群です。
・ 麹菌の酵素には抗酸化作用があり、老化の予防にも。
・ コウジ酸にはメラニンを生成する酵素の働きを抑える効果があり、そばかすやしみなどの予防にもなります。
・ さらに、イライラを抑えるGABAという物質を含んでいるので、ストレスによる肌荒れも抑えられます。「フェルラ酸」という抗酸化物質で、細胞の新陳代謝を促して肌の老化も防いでくれます。
炊飯器で簡単に作ろう! 米こうじの甘酒の作り方
米糀(こめこうじ)から作る自然の甘みの甘酒です。
アルコールも、砂糖も使わないので健康にも安心。
小さなお子さんから高齢者まで、老若男女問わず飲んでいただけます。
炊飯器で簡単に作るレシピを紹介します。
材料 (出来上がり分量約1kg)
米こうじ : 300g
米 : 1合
水 : 4合分
1. 「プラス糀 米こうじ」を使います。
2. 炊飯器、温度計を用意します。
3. 炊飯器に米を入れ、お粥を炊きます。
(米1合に対し 水は4合の目盛りまで入れます)
4. お粥を混ぜ60℃位に冷まし、米こうじを入れ混ぜます。
5. 炊飯器のフタを開け、50~60℃位に保ち、時々混ぜながら5時間~10時間で完成です。
6. 保温時間はお好みの状態を見て調整してください。
7. そのまま甘酒として飲む時は、水で薄めると飲みやすくなります。(豆乳や牛乳で割ってもGOOD!)
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