なぜ高齢者が 熱中症になりやすいのか
6月25日に 40度を超える地域が発生し、各地で、観測史上初の高気温となった地域が 1週間以上連続して多数発生しました。
全国 64地点で猛暑日を観測。
伊勢崎(群馬県)で 最高気温 40.2 ℃。
全国で今年初めての 40 ℃以上で、6月に 40 ℃以上になるのは観測史上初めてです。
東京は最高気温 35 ℃以上で、観測史上最も早い猛暑日となりました。
札幌は 30.6 ℃で前日より 9℃ 高く、真夏日となりました。
そして、猛暑日 64地点のうち 25地点は 37 ℃以上で、体温を上回る気温が観測されました。
記録的な暑さになった理由の1つは
太平洋高気圧の張り出しにより、晴れて暑い空気に覆われたためです。
上空 1500メートル付近で、東日本と西日本の広い範囲が 18℃以上、
関東には 21℃以上の暖気が流れ込んでいました。
高層観測を行っている館野(茨城県)において、
1年で最も気温が高い 8月上旬の平年値が 約 19℃ですが、
それより暑い空気が上空を覆っていたのです。
さらに、関東は山を越えた暑い風が吹き下ろすフェーン現象により、特に気温が上がりました。
外に出ると湿度の高いモワッとした空気で、
肌を刺すような強烈な日差しがジリジリ照りつけて痛く感じられました。
吹く風も熱風で、熱射の中にいるようでした。
長い時間外にいることが危険だと感じる暑さでした。
本年の暑さは 9月下旬まで続くと予測されています。
なぜ高齢者が 熱中症になりやすいのか ?
高齢者に限らず、近年の気温上昇の暑さでは
誰が熱中症になってもおかしくありません。
しかし、重篤な状態に陥る、
もしくは命を落とすほどの酷い熱中症になる方の多くは、高齢者です。
なぜ高齢者が ・・・
体内の水分量や 体力的な問題が第一ですが、
高齢者が熱中症になりやすい原因のひとつとして、
昨今の夏の暑さを 軽視している部分が大きいかと思います。
「水分を取ると トイレが近くなる」
「冷房を入れると 電気代がもったいない」
熱中症への注意を促すと、
このように返事をする高齢者が とても多いのです。
しかし、扇風機で暑さをしのげた 昔の夏とは違います。
今の時代の 夏の暑さに対する意識の薄さも、
高齢者の熱中症の原因のひとつだと考えます。
なぜ高齢者が 熱中症になりやすいのか
1 水分を取らない高齢者に対する対応
熱中症予防としては、
十分な水分摂取 が欠かせません。
しかし、高齢者の場合、
心臓病や腎臓病などの病気で 水分制限のある方も少なくありません。
そうした医療的な水分制限のない高齢者の方も、
水分を摂るのが面倒くさいと思い、
水分摂取が十分でない人が多くいます。
「水分を摂ると、トイレの回数が増えるのが嫌」
「のどが乾かない」
「お茶が嫌い」
など、いろんな理由で言い訳をします。
ですから、まずは介護者の方やご家族が、
簡単にいつでも水分が摂れるような環境を作ることが大切です。
・ 大きめのコップにお茶を入れておく
・ ポット等にお茶を入れて机の上に置いておく
こうすることで、飲む回数が増えます。
また、トイレに行ったら 必ずお茶を飲むとルールを決めて、
徹底してもらうことも効果があります。
それでも水分が足りていない場合は、食事から摂ることを心がけましょう。
豆腐や夏野菜など、水分量の多いものを食べましょう。
おやつは水ようかんやゼリー、かき氷などにするのもいいでしょう。
主食のご飯を水分多めに炊く、
食事の際には汁物を付ける等の工夫も効果的です。
とはいえ、いくら水分を摂っても、
部屋が暑ければ熱中症を防ぐことはできません。
急に暑くなったと同時に、それまで何の問題もなかった高齢者が
急にぼんやりしたり、
物忘れがひどくなったり、
普段では考えられないような言動が見られた場合、
私たちは、まず脱水を疑います。
高齢者の 1日に必要な水分摂取量は、
体重 1Kg あたり 約 40mL といわれています。
体重 50Kg の人の場合は約 2L。
この数値には食事の際に食べ物から摂取する水分量も含まれており、
食事の際に食べ物から摂取する水分量は大体 1L 位なので、食事以外に約 1~1.5L の水分を摂取しましょう。
水分さえとっていれば 認知症にならないという説もあります。
その説も 偏った内容ですが、
水分不足で頭がぼんやりし、
認知症のような症状が現れることはよく見られます。
冷房による電気代はかさみますが、命には代えられません。
電気代がもったいないと言われる方には、
熱中症で病院に運ばれて入院になった方が高くつきますよ、
と説得することもあります。
2. 冷房が嫌いな高齢者への対応
冷房が嫌いな高齢者に対しては、
「冷房を付けるしかない」
ということに尽きます。
高齢者で冷房が嫌いな人は非常に多いです。
扇風機すら付けずに過ごす方もいます。
電気代がもったいないという理由で冷房を拒否する方もいますが、
そもそも暑さに気づいていない、
認知症などで季節がわからなくなっている、
という場合もあります。
真夏でもコタツを使用したり、
閉め切った部屋で真っ赤な顔をしながら 何枚も服を着ている高齢者もいます。
エアコンのリモコンの操作がわからず 暖房設定のままの方もいます。
冷房を付けてもすぐに自分で切ってしまったりする場合は、
冷房の設定温度を28~29℃と高めの設定にしておき、
風が本人にあたらないように工夫しましょう。
さらにリモコンを隠すなどの対応する荒療治も 必要かと思います。
〇 梅雨の季節から気をつけたい熱中症
今年の梅雨は、観測史上最短の梅雨明け発表となりました。
短い梅雨期間ではありましたが、日本の梅雨は、湿度が高く、蒸し暑くなる日が続きます。
夏は汗をたくさんかくので、熱中症になりやすいイメージがありますが、
この湿度の高い梅雨の時期でも気がつかないうちに熱中症になることがあります。
梅雨は湿度が高いため、汗をかいても蒸発しにくいので熱が下がりにくくなります。
今年の夏は、特に、身体が暑さに慣れるまでの期間が短かったため、
暑さになれず、体温調節がしにくく、熱中症への注意が必要です。
1. 熱中症で救急搬送される高齢者数が多い
熱中症により救急搬送された人を年齢別に見てみると、約半数が満 65 歳以上と高齢者の割合が最も多いことがわかります。
熱中症による救急搬送状況(平成29年~令和3年)
特に、今年の6月は、熱中症で救急搬送された数は6月としては過去最多となりました。
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょう
体内の水分量が減っている
加齢に伴い、食欲の減退や食べ物を飲み込む嚥下機能に障害が生じると、水分の摂取量が減ってきます。
また、筋力の低下により、体液を多く蓄積する筋肉量が落ちることも体内の水分量が減ってしまう原因です。
内臓の働きが低下している
加齢と共に低下する内臓の働きも脱水症を引き起こす要因です。
特に体内の水分量をコントロールする腎臓の働きが低下すると、
塩分濃度を適正に調節できなくなり、脱水症に陥るリスクが高まります。
感覚機能が低下している
認知症や加齢によって暑さやのどの渇きなどを感じにくくなり、こうした感覚機能が低下することで脱水を起こしやすくなります。
病気や排泄障害がある
糖尿病での多尿や、排泄障害、頻尿などの病気により、体内の水分量が減ってしまうことがあります。
薬を服用している
血圧を下げる降圧剤や心臓の薬など、利尿作用を含んでいる薬により、体内の水分量が減ってしまうことがあります。
2. 高齢者が熱中症になりやすい時
熱中症になるのは、屋外の太陽の下だけでありません。
湿度が高い時
汗をかいても蒸発しにくい為、熱が下がりにくくなります。
季節の変わり目、急激に温度差が生じた時
体が熱さに慣れておらず、体温調整がしにくくなります。
寝不足の時
体温調整の働きが鈍くなるため注意が必要です。
3. マスク着用は臨機応変に
新型コロナウィルスの影響で日中はマスクを着用することが多くなります。
マスクにより熱がこもりやすくなるので、屋外などで人と十分な距離が取れる場合には一時的にマスクを外し、熱のこもりを解消することが大切です。
また、マスクをしていると口元が潤う為に喉の渇きを感じにくくなることや、水を飲むのが億劫になることで水分補給が少なくなります。喉の渇きを感じなくても意識して、水分を取るよう心がけましょう。
厚生労働省 ; マスクの着用について
<屋外>
○ マスク着用を推奨
他者と身体的距離(2m以上を目安)が確保できない中で会話を行う場合のみです。
○ それ以外の場面については、マスクの着用の必要はありません(例:公園での散歩やランニング、サイクリング/徒歩や自転車での通勤、屋外で人とすれ違う場面)。
特に夏場については、熱中症予防の観点から、屋外でマスクの必要のない場面では、マスクを外すことを推奨します。
<屋内>
○ マスク着用の必要がない
他者と身体的距離が確保できて会話をほとんど行わない場合(例:距離を確保して行う図書館での読書、芸術鑑賞)のみ。
○ それ以外の場面については、マスクの着用を推奨します。
〇 熱中症からの脳障害が認知症の原因となることも
脳卒中には、血管が詰まるタイプ「脳梗塞」と
血管が破れるタイプ「脳出血」「クモ膜下出血」があります。
これらのうち、「脳梗塞」は夏に発症率が高くなっています。
国立循環器病センターの報告によると、
脳梗塞患者全体では季節別発症率に目立った差はありません。
高齢者・心原性脳塞栓症・重症例では比較的寒い季節の発症が有意に多くなっています。
一方で、脳動脈の動脈硬化が原因となるタイプの脳梗塞は、
脱水などを契機とするので、暑い季節に注意が必要です。
死亡例の割合は、夏が秋に比べて高くなっています。
https://www.ncvc.go.jp/pr/release/20180425_press/
脳梗塞が夏に多くなる原因の一つは、
大量の汗をかくために、体が脱水状態になりやすいということが挙げられます。
脱水が起きると血液中の水分が不足して粘度を増し、
血栓と呼ばれる血の塊ができやすくなるのです。
また、夏は体の熱を放出しようと
末梢血管が拡張して、体は血圧低下状態になっています。
これが健康な人なら、血流が悪くならないよう、
脳の調節機能が働くので問題はありません。
しかし、生理機能が低下している高齢者の場合は、
薬による血管拡張作用のために血圧が下がり、
血流が遅くなることによって血栓ができやすい状態にあります。
特に夏は汗を多くかくため、水分を補給していないと脱水症状に陥って
血液がドロドロ状態となり、血管が詰まりやすくなるのです。
この事態は戸外だけでなく、エアコンの効いた室内でも起こります。
なぜなら、エアコンは湿度を下げて空気を乾燥させるため、
たとえ日差しを避けていても、体内から水分が出ていきやすいからです。
また、あまり知られてはいませんが、
脳梗塞の初期症状は、熱中症とよく似ています。
夏に急激に起こる
めまいや頭痛、吐き気、冷や汗、倦怠感などは
熱中症に限られた症状と思われがちですが、
脳梗塞といった血栓が詰まる病気(血栓症)でも、
同じ症状が現れます。
参考:(日本語) 脳卒中(夏に多発する脳梗塞)
http://www.self-medication.ne.jp/health/004.php
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