認知症でも選挙投票できるの?
7月10日は、第26回参議院議員通常選挙が行われます。
認知症の方が選挙で投票できるのだろうか?
と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。
選挙への参加で一番重要なことは、
認知症であっても 「選挙に参加したいか」 という
意思確認が可能かどうかということです。
総務省 : 高齢者の投票機会の確保に関する現状
施設に入居されている場合、不在者投票指定施設であれば、施設内での投票が可能です。
総務省 : 投票制度
入居施設が指定施設であるか確認してみてください。
認知症でも選挙投票できるの?
こんな事例がありました。
認知症で施設入居している母親がいました。
母親には、若い時から支持する政党があり、認知症を発症するまで欠かさず選挙に出向いていました。
選挙演説が行われると聞くと、演説会に足を運んで応援していた政治家がいました。
母親は認知症になっても、きっと投票をしたいだろうと思い、
不在者投票を該当施設に依頼したそうです。
第三者である病院スタッフが、
「選挙で投票したいですか?」と聞くと、
しっかりと頷き、「投票する」と言ったそうです。
この時、時折、意思疎通ができない時もあったのに、
認知症である母親が他者ときちんとコミュニケーションを取れたことも嬉しかったと語っていました。
しかし、残念なことに、いざ、投票という当日。
本人確認のために氏名を尋ねられた時に、
母親は、旧姓で名乗っってしまったのでした。
結局、投票はできなかったということです。
一方、不在者投票指定施設での不正投票の懸念もあります。
実際に裁判になった事件ですが、
指定施設の施設長が、ある政治家と親密であり、
重度認知症患者の方を集めて、「この人に投票したいですか?」と聞き、
少しでも反応があれば、別の施設職員が代理で投票した
という選挙権の不正利用をしたという事件もありました。
結果、施設長には、裁判で罰金刑が言い渡されました。
郵便等による不在者投票が可能な場合もあります。
身体障害者手帳か戦傷病者手帳をお持ちの選挙人で、
対象者に該当する方又は介護保険の被保険者証の要介護状態区分が「要介護5」の方に認められています。
総務省 資料 : 郵便等投票の対象となる障害の程度等を有する者
総務省 資料 : 参考要介護度の基準について
市区町村の選挙管理委員会に申請して、投票が可能です。
自身で字を書くことが困難な場合は、係員が代わりに候補者の氏名を記入する「代理投票」制度があります。
これには、「代理記載制度」の申請も必要です。
家族や信頼できるヘルパーなどが付き添って、投票所まで行くことができる場合、
「投票所内に家族が同伴して、投票用紙に代筆していいの?」と思うかもしれません。
家族等の代筆は認められておらず、投票所の係員が選挙人の投票を補助する(代筆する)代理投票により投票をすることができます。
投票所の係員に申し出ることが必要です。
点字器、手話通訳が必要な場合は、
事前に市選挙管理委員会に連絡をすると、手話通訳者を投票所へ派遣してくれます。
車椅子や、投票用紙を記載する際に用紙を押さえる文鎮の準備もあります。
また、投票所内では付き添い人の代わりに、係員が車椅子を押すなどのお手伝いをします。
ここで問題が生じることもあります。
家族など親しい人が相手なら会話も意思疎通もできて、選挙の意味や争点も理解できていても、
投票所の中では家族のサポートは禁じられているため、
まず、投票所の入り口で家族から引き離されてしまいます。
二人の選管職員に連れられ、見ず知らずの職員から、だれに投票するのかを聞かれます。
傍らには、別の職員が不正防止のため監視しています。
このような時に、認知症や精神障害の方の中にはパニックになる方もいます。
さらに憲法では、誰が誰に投票したかを秘密にすると定められています。
(1947年施行の日本国憲法の第15条に「投票の秘密」が保障され、さらに公職選挙法46条で「無記名の投票」、同52条で「投票の秘密保持」が保障されています。同226~228条には罰則も規定されています。)
これが民主政治の根幹ですが、「選管職員に限る」というルールは、自分の投票先をその職員に明かすことになってしまいます。
ある事例では、脳性まひで自筆が困難ではあっても、投票の意思は明確な方が投票所へ行きました。
投票用紙の限られた枠内に収まるよう文字を書けないため、判読されずに無効票とされたくないと、手助けを求めました。
その際、投票先を打ち明けるなら、選管職員ではなく、信頼している知人やヘルパーなどにお願いしたいと願い出ましたが、
「選管職員に限る」というルールのため投票を拒否された事例もありました。
「大阪都構想」の賛否が問われた2020年11月の住民投票では、障害のある娘に付き添って代わりに母親が投票しました。
しかし、正当な理由なく投票したとして公選法違反(投票偽造、投票干渉)の罪に問われた事例もあります。
弁護側は、被告(母親)を介さなければ長女は意思を表示できないと主張しています。
1947 年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行され、
同年4月20日に第1回参議院議員通常選挙が行われました。
昭和の時代では、投票率は75%~60%ほどでしたが、
平成になり、60%に届かず、時には半数を割り45%以下の時もありました。
COVID-19感染拡大や、ロシアのウクライナ侵攻という暴挙、及びそれに伴う経済不安など、国防や日々の暮らしへの危機感が高まっている昨今、
認知症を発症された方でも、これまで同様、投票可能であれば、将来の社会形成のために、より投票しやすい選挙にしていきたいですね。
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