キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連 について
ご家庭でも広く食されている キノコ。
キノコには、食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれています。
また、いくつかの抗酸化物質も豊富に含まれ、健康にも役立ち、栄養価の高い食品です。
近年、流行りの「腸活」ですが、キノコは腸内環境を整える「菌」そのものを食べられます。
つまり、キノコは 「腸活には欠かせない食べ物」と言えます。
最近の研究では、きのこを継続的に食べることによって
免疫力の向上や、体脂肪の減少、高血圧や脂質異常症の改善といった
生活習慣病の改善にも役立つ可能性も示されています。
筑波大学の青木鐘子氏ら複数の研究者たちによって、
キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連調査が行われました。
原著論文は こちら
その結果、日本人女性において、キノコの食事摂取が認知機能障害リスクの低下と関連していることが示されました。
(The British Journal of Nutrition 誌 オンライン版 2024年1月19日号)
分析対象
秋田県、茨城県、大阪府内の3つの自治体に在住する地域住民(40歳~64歳) かつ 1985 ~ 99年に毎年実施されていた心血管リスク調査に参加
参加者
条件を満たした 3739人(男性1650人 / 女性2089人)
調査方法
認知症による障害が認められた事例を 1999~2020年に調査。
24時間思い出し法を用いて食事の内容を調査し、その後2020年までの間に、介護が必要な認知症(要介護認知症 ※1 )を発症した人がどのくらいいたかを調べた。
脳卒中の既往歴の有無にかかわらず、キノコの摂取量に応じた認知症発症数のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
※1 「要介護認知症」は、介護保険制度に基づく要介護認定を受けている「認知症高齢者の日常生活自立度」がIIa超(日常生活に支障をきたすような症状、行動や意思疎通の困難さが多少見られるが、誰かが注意していれば自立した生活ができる状態、あるいはそれより悪い状態)
認知症の種類に関する情報は得られなかったため、脳卒中歴のある人の認知症は血管性認知症である可能性が高く、脳卒中歴のない人の認知症にはアルツハイマー病が多いと推定。
対象者
3群に層別化 (キノコ(シイタケ、シメジ、エノキタケ、ナメコ)の1日の摂取量に基づいて)
・ 摂取なし〈参照群〉(2560人、うち51.7%が女性)
・ 0.1~14.9g(528人、65.0%が女性)の3群に層別化しました。
・ 15.0g以上(651人、65.0%が女性)
主な結果
・ 3,739人を平均16.0年フォローアップ(追跡)調査したところ、障害を伴う認知症を発症した人は670人(男性260人 / 女性410人)であった。
・ 1000人-年当たりの発症率は男性が 10.2、女性は 12.0であった。
・ 女性では、キノコの摂取と認知症リスクの逆相関が認められた。この関連は、脳卒中の既往歴のない認知症に限定されていた。
・ 女性における認知症発症の多変量HRは、キノコを摂取していなかった人と比較し、キノコの摂取量が 0.1~14.9g / 日で 0.81(95%CI:0.62 ~ 1.06)、15.0g / 日以上で 0.56(0.42 ~ 0.75)であった(p for trend=0.003)。
・ 脳卒中の既往歴のない認知症におけるハザード比は、キノコの摂取量が 0.1~14.9g / 日で 0.66(95%CI:0.47 ~ 0.93)、15.0g /日以上で 0.55(0.38 ~ 0.79)であった(p for trend=0.01)。
・ 男性では、キノコの摂取と認知症リスクとの関連が認められなかった。
・ キノコを摂取しない女性と比較すると、0.1~14.9g のグループでは要介護認知症のリスクが 19%低く、15.0g 以上のグループでは 44%低くなった。
・ 脳卒中歴のある女性では、キノコの摂取量と認知症の関係は有意ではなかった。 脳卒中歴のない女性では、0.1~14.9g のグループでリスクが 34%低く、15.0g 以上のグループでは 45%低くなった。
・ 女性の要介護認知症リスクは、キノコの1日の摂取量が10g 増加するごとに 11%低下し、脳卒中歴のない女性では 12%低下することが示された。
上記のように、 キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連 について キノコの摂取量が多いほど認知症リスクは低いことが示されました。
キノコ 10gの摂取は、小さな生シイタケなら 1.5個程度、シメジなら 5本程度で10gになります。
エノキタケは小パックがおおよそ 100g、大パックはおおよそ 200g(ただし廃棄部分を含む)
ナメコは一袋が 100g程度なので、料理に少し加えるだけで、10gや20gは簡単に摂取できます。
(参考:Care Net・日経グッディ)
キノコは認知症だけでなく、ガンのリスクも減らせることがわかりました。
米国 Pennsylvania 州立大学医学部のDjibril M Ba 氏らが、キノコの摂取とあらゆるガン、および、各部位のガンのリスクの関係を検討しました。
結果は、キノコの摂取量が多くなると、ガンの発症リスクが低くなりました。
摂取量が最も少なかったグループと 摂取量が最も多かったグループのガン発症リスクを比較すると
リスクは 34%低くなっていました。
ガンの発生部位別では、乳がんについてのみ、統計学的に有意な関係がみられました。
キノコの摂取量が最も多かった女性では、乳がんのリスクが 35%低いことが示されました。
乳がん以外のガンのリスク分析では、キノコの摂取量が最も多かったグループでは発症リスクが 20%低いことが示されました。
キノコの摂取量については、キノコを全く食べない場合と比較すると、1日18g の摂取で、あらゆるがんのリスクが 45%低下する可能性が示されました。
論文は、2021年3月16日付の Advances in Nutrition 誌電子版に掲載されています(※ 1)。
※ 1 Ba DM, et al. Adv Nutr. 2021 Mar 16;nmab015. Online ahead of print.
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