血液脳関門 という言葉をご存じでしょうか?
脳は とても脆弱な神経器官です
そのため、ジャンクなものが 脳へ入らないための物理的な障壁(タイトジャンクション)が 存在します。
その障壁のことを 血液脳関門(けつえきのうかんもん) と呼びます。
「Blood Brain Barrier」の英語の頭文字をとってBBBとも呼ばれています。
血液脳関門はとても複雑な働きをし、
分子輸送系、シグナル伝達系など
中枢神経の恒常性を維持するための 重要な役割もあわせもっているのです。
血液脳関門 (Blood Brain Barrier : BBB)は 1913年に初めて報告されました。
血液に含まれる物質が 脳にだけ 蓄積しないことを
発見したことが きっかけで 見つかったようです。
中枢神経系の環境を維持するために、
血液脳関門が 必要な物質か、
不要な物質か を 判断して 受け渡しています。
血液脳関門 というと
血管を隔てる 門のようなものが 存在するような イメージが 持たれますが、
実際は 脳に 存在する 細胞 (ニューロンやグリア細胞など) を覆うように
毛細血管が 網目のように 張り巡らされており、
その血管を 構成する 脳毛細血管内皮細胞 が
血液脳関門としての役割を果たしています。
(画像:東北大学 大学院薬学研究科 生命薬科学専攻 生命解析学講座 薬物送達学分野 立川 正憲 氏)
通常の毛細血管は 内皮細胞の隙間が 空いているので、
細胞間隙を介した物質の透過が起きます(毛細血管の内部から物質が外に滲み出る)。
しかし、脳毛細血管内皮細胞は緻密に密着しているため、このような細胞の隙間は無く、
物質の透過が起こらないようになっています。
もしも物質が血管の外側(脳細胞)に透過したい場合はトランスポーターなど専用のシステムを使う必要があります。
これが血液脳関門の正体です。
わかりやすくいえば、
血液脳関門は、血液中の物質が脳の中に移動するのを制限する役割を担っています。
いわば門番のような働きをしてます。
では、なぜ、門番が必要なのでしょうか?
それは、ヒトの血液の中には、脳の栄養となる物質と
脳に有害な作用をもつ物質がごちゃまぜに含まれているからです。
血液の中には、酸素と二酸化炭素という相反する物質が含まれているのと似ています。
血液は、体の用水路なので、色々な物質の通り道となっているのです。
その中から、脳に必要な物質と不必要な物質をふるいにかけて、
必要な物質を脳に選ぶために血液脳関門という機能が人には備わっています。
そのため、すべての物質は、脳に入る前に、血液脳関門(BBB:blood brain barrier)という関所を通過しなくてはいけません。
1. 血液脳関門を通過する物質
血液中の物質 → 血液脳関門 → 脳内の血液へ
2. 血液脳関門 を通過しない物質
血液中の物質 → 血液脳関門 → 体の中の血液へ
血液脳関門は、血液に含まれる物質の移動を制限することで、脳の神経細胞を守る働きをしています。
基本的に 脳に役立つ物質は 自由に通過させて、
脳に害になる物質は 通過させない働きを 持ちます。
具体的にいうと、
神経細胞の活動に必要な グルコースや酸素、
体で産生された ケトン体などは 自由に移動できます。
細菌や ウイルスなどは、
血液脳関門を 通過することができません。
しかし、アルコール、ニコチン、カフェイン、抗うつ薬なども 血液脳関門を 通過してしまいます。
神経細胞の立場から言えば、
どちらかといえば 害になる物質です。
実は、物質の中には
脳の中に 移行しやすいものと、
移行しにくいものがあります。
その違いはなんでしょうか?
血液脳関門 を通過しやすい物質の3つの特徴
1. 分子量 500以下の物質
分子量というのは、物質の大きさを表す単位です。
この 分子量大きいほど、大きい物質となります。
分子量が 500以下の物質は、大きさが 小さいと見なされ、
血液脳関門を 通過しやすくなります。
薬で 例をあげるとすると、
脳に 作用する薬です。
睡眠薬や 向精神薬などは、
分子量が 500以下のことが多く、
血液脳関門を通過して 薬の効果を 発揮します。
2. 脂溶性が高い物質
脂溶性とは、油に溶ける性質のことです。
油に溶けやすいものほど、血液脳関門を通過しやすくなります。
物質は、
水に溶けやすい水溶性と
油に溶けやすい脂溶性に 分かれます。
どちらかに溶けやすい性質を持つものや 両方に溶ける性質をもつ 物質もいます。
アルコールや麻薬などは、脂溶性の性質を持ちます。
3. もともと通過出来る物質
血液脳関門を もともと通過してしまう物質も 中にはあります。
脳科学辞典 「血液脳関門」より
血液脳関門の 解剖学的実体は 脳毛細血管であり、
脳室周囲器官を除いては、
内皮細胞同士が 密着結合で連結しています。
当初は、血液脳関門の 構造的特徴によって、
細胞間隙を介した 非特異的な中枢への侵入や、
脳内産生物質の流出を阻止している
物理的障壁と 考えられてきました。
しかし現在では、
血液脳関門は
脳に必要な物質を 血液中から選択して 脳へ供給し、
逆に 脳内で産生された不要物質を 血中に排出する
「動的インターフェース」であるという 新たな概念が 確立しています。
血液脳関門には、
多様なトランスポーターや受容体が
内皮細胞の脳血液側と 脳側の細胞膜に 極性をもって発現し、
協奏的に働くことによって、
循環血液と 脳実質間での ベクトル輸送を 厳密に制御しているのです。
脳は、高度な神経活動のため シナプス周辺の環境が
血液脳関門によって 厳密に制御されています。
血液脳関門の解剖学的実体は脳毛細血管であり、
内皮細胞同士が 密着結合 (tight junction) で連結しています。
密着結合構成タンパク質には、
クローディン、オクルディンなどが知られています。
一部の内皮細胞には、周皮細胞 (pericyte) が接着し、
その大部分を 星状膠細胞の 足突起が覆っています。
このような血液脳関門の 構造的特徴によって、
血液構成成分や 投与薬物の、内皮細胞間隙を介した 非特異的な中枢神経への侵入や、
脳内産生物質の流出を 阻止しているのです。
ただし例外として、脳室周囲器官と呼ばれる、
終板血管器官、
脳弓下器官、
交連下器官、
視床下部正中隆起、
松果体、
下垂体後葉、
最終野 などの領域では、
毛細血管内皮細胞が 密着結合で連結していないため、
末梢血管と同様に 血液と これらの組織間の物質の移動は 比較的自由になっています。
当協会発行 メールマガジン 第39号 にて 血液脳関門の働きを高める霊芝 について 配信しております。